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街角ピックアップ〜悲報!タイで大人気の毘沙門天は北方を守護せず。

  • 執筆者の写真: akiyamabkk
    akiyamabkk
  • 2024年8月25日
  • 読了時間: 3分

更新日:2024年8月28日


シーリアム寺のターオウェートスワン像
トゥンサワン寺のターオウェートスワン像

タイのお寺に行くと、ボディーガード然として立っている青鬼さんは(赤鬼、黒鬼の時もある)、タイで、ターオ・ウェートスワンと呼ばれる仏神である。ターオはタイ語で王を意味し、ウェートスワンは Vaiśravaṇa の音訳だという。サンスクリット語で「遠くから聞こえる」とか「有名な」とかいう意味らしい。戦争の神であり、多くのデーモン、鬼たちを従えて仏教と人間世界を守護するシークレットサービスの長。財運を呼び込む幸運の神だから華僑系タイ人の信奉者も多い。日本では、四方のうちの北を守護する神様で、北方を背に南面して神社仏閣に祀られる・・・とここまで来ればもう分かりではないか?


そうです、四天王の一角、毘沙門天です。


我が村の寺の本堂と毘沙門天
本堂を守護するターオウェートスワン=毘沙門天
タイの毘沙門天は意外とキュート

ターオウェートスワン=毘沙門天は、四天王のうちとりわけ人気があり、お寺の本堂をお守りしているのは、大概が毘沙門天である。毘沙門天が武神であるからだろうが、単独で祀られる事が多いためか、「北を守る」という本来の役割は、ほとんど意識されていないようだ。


「向き」の問題について、普通のタイ人がどう考えているのか?タイの2チャンネル、パンティップ掲示板を覗いてみると、こういう質問があった。自宅に毘沙門天を祀っている人の投稿らしい。


「ターオウェートスワンをどちら向きに置いたらいいか教えてください。私の家は玄関が西向きなので、西向きに置いています。最近、不眠症気味で、金縛りによく遭うので困っています。毘沙門天の置く向きが違うからでしょうか。至急、教えていただくたく、投稿しました・・・」


「ほとんど人生相談」のこの質問への答えは、「東です」、とただこれだけだった。推測するに、極楽(スカワディー)はタイでも「西方浄土」なので、毘沙門天のような戦闘能力の高い神は西を守護すべきだと考え、「だから西を背にして東を向くはずだ」というロジックを採用したのではないか?もっともこれは大乗仏教の阿弥陀信仰からくる発想であり、「華僑たちならこう考えるかもしれない」という程度の憶測である。いずれにしろ、ここでも、「北方を守護する」という毘沙門天本来の役割は無視されている。


二つ目以降の写真の毘沙門天は、奥さんの村のお寺にあるものだ。今年、建立した本堂とセットで購入したもので、体長5メートルほどの本体が18万バーツ、土台の建設費が2万バーツの計20万バーツかかったそうである。本堂の建立は村人悲願の大事業で、10年以上の歳月をかけ、1500万バーツを超える資金を集めた。それに比べれば、毘沙門天の購入費など、象の鼻に蠅が止まった程度のものだろう。(そういうタイ語の諺はありません、念の為)


と言っても、寄付した人にとっては大金なのである。毘沙門天の設置費用のうち半分の10万バーツは、日本に住む自分の義理の妹がお布施、タンブンした。義父の看護と主婦業の傍ら、新聞のチラシ入れのアルバイトをしてコツコツ貯めたお金を寄付したのである。見上げた事だと思うので、ここに記録しておく。このターオウェートスワンは、彼女ら一族にとって心強い守護神になるに違いない。

自分はこういうことを信じないからご加護の対象外でいいが、彼らが、幸せで、お金持ちになってくれるに越したことはない。


ちなみに、我が村の毘沙門天は、東でも、南でもなく、西を向いている。寺の表門が西向きで、本堂も西側を向いているから、寺を外敵から守るためには、西側を向いたほうがいいのである。奥さんの話では、もし今年、雨があまり降らなければ、それは、毘沙門天の向きが悪いためであり、東なり、南なり、正しい方向に置き直す。しかし、幸いに、今年は雨もよく降って、村人から文句も出ていないので、このままで行くのだという。


西日に向かって立つ毘沙門天

こういう、よく言えば「融通無碍」、悪く言えば「いい加減」なところがイサーンの良いところだと思う。そうでなければ、こんなクソ暑いところで、幸せに生きられない。


ではでは



<了>



参考 毘沙門天について 

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