街角ピックアップ~コロナに効く薬草あり
By Hideki AKIYAMA
2021/08/11
■写真はコロナ薬「ファータライチョン」の鉢植えと乾燥させた葉っぱ
8月に入ってタイのコロナ感染者2万人を突破、死者も多い時で一日に300人を超えた。医療崩壊が進み、検査も受けられず自宅療養中に亡くなるケースが相継いだ。母親の最期をまだ年端もいかない子供たちが看取ったり、自宅でなすすべもなく家族の全員が死んでいくケースなどもあり、連日悲惨なニュースを報道するメディアに、「もうたくさんだ」という苦情が視聴者からよせられたほどだ。
ということで、リスクグループに属する私も、籠城生活を余儀なくされていたところ、田舎の老父母から荷物が届いた。コロナに効くとされる食物、ハーブの詰め合わせである。赤ネギ、にんにく、しょうが、それからファータライチョーンと呼ばれる薬草。この、タイの田舎ならどこにでも自生するハーブは、風邪薬としてコンビニなどで売られてたが、「コロナに効く薬」として最近、一躍脚光を浴びている。
日本名センシンレン(穿心蓮)、学名 Andrographis paniculata、英語では creat、とか green chiretta とか呼ばれる。薬草に含まれるアンドログラフォリドという成分にウィルスの増殖を防ぐ効果があるという。タイ保健省の伝統医学局が動物実験で確認したとされているから、一応の科学的根拠はあると考えていいだろう。コロナに感染し自宅療養中の病人には、体温計やパラシティモル(解熱剤)などと共に、このファータライチョンの成分を錠剤にしたものが政府から送られて来る。つまり、「コロナに効く薬」が田舎から鉢植えで送られてきたわけだ。
デルタ株によって感染が爆発的に広がったタイでは、従来の「感染者はすべて入院させる」政策を転換せざるをえなくなった。したがって、国民の側は、中国製の安価な簡易検査キットを通販で買い、自分で検査して、感染していれば自宅で療養し、いよいよ容体が悪化するまでは、解熱剤やハーブ薬などで自衛するしかない状況が続いている。ファータライチョンは庶民が調達可能は対コロナ自衛戦の重要な武器となった。だから、タイ政府は、買い占め、買い置きにより在庫が底をつくことを懸念して「予防には効果がないので、感染し発症してから使うように」と正しい使用法の説明に躍起になっている。
わが家では通信販売で錠剤を二瓶、ごく控え目に購入したが、鉢植えで栽培したもの用いる分には、供給のひっ迫に加担することにならにだろう。試しに、田舎から送ってきた葉っぱを煎じて飲んでみたが、しかし、これがものすごく苦いのですな。「良薬口に苦し」という言葉を久しぶりで思い出した。
<了>
参考 タイ保健省のフェイスブック