瀬戸正夫さんインタビュー⑤〜父親との別れと邦人疎開計画
瀬戸正夫さんインタビューダイジェスト版の5回目。今回で一応、最終とする。このインタビューは、前のものから2年後の2023年7月16日に撮影された。瀬戸さんは92歳となっていた。
最終回は、慕っていた父親との予期せぬ別れ、戦後になってから決別に至った経緯と、敗戦の夏に進んでいたバンコク在留邦人のバッタンバン(現在のカンボジア西部)疎開計画について語ってくれている。既に、疎開宿舎の建設が始まり、荷物の送付も終わった後に、終戦の詔勅となった。外地タイでも、日本軍及び日本国臣民は徹底抗戦の構えであったことが窺われる。空襲による被害がまだ少なかった分だけ、外地日本人の戦意は高かったのではないか。
さすがの瀬戸さんも、全体で1時間ほどのインタビューの後半には、疲れのため言葉が出なくなり、質問と答えが噛み合わなくなっている。そのため、瀬戸さんご本人の直接体験としての終戦日、および敗戦を知っての感想が聞けなかつたのが残念である。
少し朦朧とされていて、その虚な感じに、瀬戸さんの中で失われていった記憶も既に多いのではないかと察せられ、衝撃を受けた。ある歴史の最後の証言者の言葉を、肉声として記録し残したいというのが、聞き手である宇崎真さんの意図だったが、それにギリギリ間に合ったと言えるのかどうか、少々心許ない。
そんな自分の懸念など笑い飛ばしてくれるほど、瀬戸さんが、今後も堅固でおられることを願っております。
<了>