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注目クリップ〜「ミミハゲワシの野生個体数回復プロジェクト(スープナーカサティアン財団広報ビデオ)

akiyamabkk


スープナーカサティアン財団の「ハゲワシ再生プロジェクト」広報ビデオ。同財団は、野生動物の保護と政府の開発政策との板挟みとなり、自ら命を絶った森林局の官吏、スープ・ナーカサティアンの名前を冠した自然保護団体で、このプロジェクトを自然公園局、動物園機構、カセサート大学と共に協賛している。


ドローンによる空撮は、フアイカーケーン自然公園内に造られた高さ20メートルの巨大ケージ。ゴルフの打ちっぱなし場のような形状である。ここに、動物園で飼育されていた、ミミハゲワシのツガイを放して交尾させ、生まれてきた子供ハゲワシを自然に返そうという壮大なプロジェクトである。


ミミハゲワシはタイ名「パヤーレーン」、ハゲワシの王との意味である。カセサート大学のチャイヤン准教授によれば、タイに生息していた在来種三種(ミミハゲワシ、インドハゲワシ、ベンガルハゲワシ)のうち、餌場に最初に降りてきて食べ始めるのはこのミミハゲワシである。その餌場を支配する堂々たる様が「ハゲワシの王」と人々に映ったのではないか?


アユタヤ期にコレラが流行した時、感染して亡くなった人の死骸をハゲワシが処理して、悪疫の更なる拡大を防いだという逸話があるが、おそらく、その功績も、在来種の中で突出した支配力を示す、このミミハゲワシに帰するのではないかと推測する。ハゲワシの歴史的功績は、あるバンコクの有名寺院に彫像とされて顕彰されている。


繁殖地としてフアイカーケーン自然公園が選ばれたのは、1992年の2月14日、密猟者が餌に仕込んだ毒により大量死するまで、この土地がミミハゲワシの生息地だったためだ。このミミハゲワシのツガイは、それからちょうど30年後のバレンティンデーに、彼らの父祖がかつて生ききた土地に戻ってきたわけである。


しかし、二頭のハゲワシは、子作りより先に、まず新しい環境に慣れる必要がありそうだ。下のアドレスにあるのは、高く飛び、高木にとまる訓練を始めたハゲワシのミン(メス)とポーク(オス)の映像。動物園生まれの彼らにとって、「空高く飛ぶ」というハゲワシ最大の特徴的能力、ごく当たり前の習性でさえ、新しく習い直さなせればならない。



前述のチャイヤン先生ら関係者は、3年間子作りができなかったら動物園にハゲワシを返すという。息の長いプロジェクトだが、欧州のハゲワシのケースでは、野生生息数ゼロから個体数の回復に成功した例もある。タイで飼育中のミミハゲワシはわずか5頭になってしまったが、野生ハゲワシの再生は決して不可能な話ではないのである。


プロジェクト予算は200万バーツ(約700万円)と懐事情は厳しいが、関係者の士気は高い。野生動物の保護に無償の情熱を注ぐタイ人たちと、ミミハゲワシのアダムとイブに敬意を表しながら、新世代誕生の朗報を待ちたい。


<了>


参考


スープナーカサティアン財団のホームページ


フアイカーケーン繁殖センターのホームページ


欧州のハゲワシ再生プロジェクト


アジアのハゲワシ保護プロジェクト

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