注目クリップ~タクシーの墓場(Khaosod Online 2021/08/03)
クリップ見出しは「数千台のタクシーの墓場、タクシー運転手たちはコケコッコーと鳴くくらい卵ばかり食べている!」後のフレーズは、インタビューされたタクシー組合会長の「今タクシー運転手は生活が苦しくて、インスタントラーメンと、缶詰、卵だけで生活している。鶏になってコケコッコーと鳴くぐらい卵ばかり食べてるよ」という言葉から。
このタクシー組合は、組合員の車の購入を後押しする方針を取り、車の所有者は主に組合員だったのだが、返済が遅延するケースが多くなったので、組合がローンを肩代わりし組合員から徴収して返済することにした。しかし、コロナ感染が再び拡大し、離散する運転手が相次ぎ、車は借り手のないまま放置され、熱帯の植生が瞬く間に車につる草を生い茂らせることになる。返済の焦げ付きは数十億バーツに上った。
莫大な負債を抱えた組合は駐車場代も払えず、にっちもさっちもいかなくなって破れかぶれの戦略に打って出ている。タクシーを運転して省庁に押し掛け支援を要求し、受け入れられなければ、その役所の前にタクシーを放置するという戦略に出ているのである。放置されたタクシーは2000台に上る。タイ政府は、タクシー運転手に対しては、第一波並みに一月5000バーツを3か月支給することにしているが、今回のコロナ不況は前例のない厳しさで、それ以上の支援がないとタクシー業界が消滅してしまうと、組合長は危機感を強めている。
「ガス代が上がって(タイのタクシーは概ね天然ガスを使用している)リッターあたり14,5バーツになった。これを半額の8.5バーツくらいに下げてほしい。普通なら一日走れば2000バーツくらいの売り上げがあり、そこから850バーツから900バーツの車両レンタル料とガソリン代を払う。今は、それだけ稼げない。運転手の手もとに少しでもお金が残るようにガス代を値下げしてほしい」
組合長は他にも、今は、バンコク市内だけで許可されているタクシーの運転免許を、ロックダウンされていない地元の県で稼げるように、他県でも交付してほしいと嘆願している。組合としても少しでもタクシーの稼働が増えれば、一息つけるからだろう。
車のローンは、主にトヨタリースから借りている。トヨタは、返済遅延者に対する追徴利子を免除しているが、組合としては、返済の猶予期間、モラトリアムを設けてほしいと考えている。
「運転手がコロナに感染すると、入院14日、退院後14日と一月は休ませなければならない。その間にも容赦なく利子はかかってくる。我々の組合は、これまで返済期間はきちんと守ってきた。こういう非常事態なのだから、何とか助けてほしい」
タクシーの墓場、出口の見えないコロナ禍とコロナ不況を象徴するような光景である。
<了>
参考