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注目クリップ~1972年12月、ジョン・バエズのハノイでのインタビュー(AP通信の公式サイトより)

akiyamabkk

1972年12月、ジョン・バエズら一行は北爆下のハノイに滞在し、米軍の爆撃による民間人の被害を見届けている。インタビューは爆撃が停止された12月30日、一行がハノイを離れる日に撮影された。主に答えているトレンチコートの男性は、ナチスの犯罪を裁いたニュールンベルグ裁判の検察官だった弁護士テルフォード・テイラーだろう。病院への爆撃で矛盾した情報があるが?と質問する記者に対し、「バクマイ病院は完全に破壊されている」ときっぱりと答えている。横から「爆撃は一回ではなく、複数回行われた」と口をはさんでいるのが、ベトナム帰りの元兵士で反戦活動家のバリー・ロモだと思われる。病院等民間施設への攻撃を否定していた米政府は、彼らの証言のために事実を認めざるを得なかった。


バエズは、ハノイ訪問の感想を聞く記者に対して、率直にこう答えている。


「他の人と同じことですが、ここで行われている恐るべきことを、理解するのに少し時間がかかりました。ここから去ることができるという安堵の気持ちと、こういう行為に国民の一人として加担しているという罪の意識と、二つが入り混じった気持ちですね。」


そして、Hideousness(恐ろしいこと、醜いこと)とは、どういう意味かと問う記者に、おずおずと、口ごもりながら、


「殺人、虐殺、流血、そういうことですね」


と、答えている。そこに「自分は正義の側にある」という高揚感はなく、ただただ、自分が見てしまった現実に打ちのめされているという印象である。


ベトナム戦争に従軍し、後に軍縮問題の権威となったドン・ケイトという人が、バエズのこのような態度と、数か月前にハノイを訪問したジェーン・フォンダとを比較してこう書いている。


ジョン・バエズは彼女の平和主義の信条や戦争への嫌悪に関しては歯に衣着せなかった。だが、ベトナム戦争中もっとも激しい爆撃を体験した後でさえ、反米的コメントに誘導しようとする番組の司会者に対して、彼女の信念が揺らぐことはなかった。彼女は、「全ての側の戦争を嫌悪する、その戦争が誰のものであろうと」と言い続けたのである。ベトナムで戦っていた我々は、彼女の発言した直後にそれを聞いた。我々は粗野な兵士にすぎなかったかもしれないが、バエズの戦争反対の主張と、フォンダの大っぴらな北ベトナム支持のプロパガンダとの微妙な違いを理解することができる程度には知的だったのである。当時も今も、その微妙な違いを、プレスは見逃しているが・・・。


バエズはハノイから帰国後一か月ほどしてから、音楽雑誌「ローリングストーン」のインタビューを受けているが、その時にもこういうことを答えている。「あるベトナム人が私に聞きました、あの米軍の爆撃機を打ち落としてやれれば、どんなに気持ちいいか、そう思わないかい?と。私は、そうね、もしパイロットがその前に脱出できるなら、気持ちいいでしょうね、と答えました」


帰国後激しい批判にさらされたジェーン・フォンダから処世上の教訓を学んだのさ、という皮肉な見方もあるだろが、これは自国の戦争に直面した絶対平和主義者が必ず直面する矛盾だと思う。少なくともバエズには「あなたの同国人を殺したら気持ちいいだろうね」と問われて、「そうね」と調子を合わす軽薄さはなかったのである。


ジョン・バエズはクェーカー教徒だった。ニクソンもクェーカー教徒なのは歴史の皮肉だが、バエズの平和主義には付け焼刃ではない、時代の潮流とは別の一貫したものを感じる。このインタビューでも、他の男性二人には「正しいことをしている」とい気負いや熱が感じられるが(それは当然そういうものだろうが)、バエズは「困ったなあ」という顔しかしていない。それが面白かったので投稿してみた。


しかし、「バエズの曖昧な態度は、結局は、アメリカ帝国主義の侵略戦争を容認することとになり、戦争継続に加担することになる。バエズは真の平和主義者ではない」とか言い出す人がいたんだろうな。当時は、あるいは今でさえ。


<了>


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※ドン・ケイトの文章の原文は以下


Ms Baez made no bones about her pacifist beliefs and her hatred of wars. Yet, even after suffering through some of the most intense bombing raids of the entire Vietnam War, when asked by her hosts/watchers to make anti-US statements, she stuck to her beliefs, saying she hated all war by all sides, no matter what. We fighting men heard Baez's statements as soon as they were made. Somehow, we ignorant warriors were sophisticated enough to recognize the difference between Baez's anti-war statements and Fonda's open promotion of North Vietnamese victory--an apparently too-subtle distinction that has escaped the press even today.

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