歴史から消された「南ベトナムの夢」〜あるベトナム系カナダ人が提示するもう一つの歴史の「If」
最近、自分も同じ事をよく考える。
“Here’s another version of alternative history: what if South Vietnam had become an independent, democratic state and stayed in armistice, like South Korea? What if South Vietnam hadn’t experienced a massive brain drain and instead their economic and cultural influence grew globally? Perhaps South Vietnam would have had a V-pop and the first foreign film to win an Oscar. Or perhaps South Vietnam would follow the path of other democratic Southeast Asian countries, like Singapore or the Philippines. “
引用は、サイゴン陥落後、ボートピープル、ベトナム難民として2歳でカナダに渡った歴史研究者のエッセイから。4年前、サイゴン陥落45周年に寄稿された。
来年のベトナム戦争終結50周年では、難民出身のこの歴史家が提示した「もう一つの歴史のif」を避けて通って、ドキュメンタリー番組は作れないと思う。特に、ウクライナへのロシアの侵略戦争が起こってしまった今となっては、ノスタルジックなベトナム戦争秘話、人民戦争英雄譚に、様々な意味で、時にはそれぞれ正反対の立場から、懐疑的な視聴者が多いのではないか?
一例を挙げれば、「独立と自由ほど尊いものはない」と北ベトナムの伝説的指導者は言ったそうだが、今のベトナムに市民的自由はあるのだろうか?・・・そういう視聴者がもつ当然の疑問を「素朴」「曲解」(もちろんホーチミンは植民地主義、外国の支配からの自由を言っているのである)と片付けるだけでは、番組として及第点は取れないと思う。
引用の終わりの部分、「南ベトナムが同じ道を歩んだかもしれなかった、民主的な東南アジアの国々」にタイを含めなかったのは正解だが、インドネシア、マレーシアは入れてあげても良かったのではないか。紆余曲折を言うならフィリピンにもあったのだ。タイの場合は「慢性病」であり、三権を総合的に見て、一時期を除いて、常に半分以下の民主国家なのだからリストから外されて当然。シンガポールは「統制された民主主義」なのかもtしれないがよく実情を知らない。
<了>