◇椿三十郎(1962年)※リメイク版を含めタネアカシあり
もちろん、黒澤の「椿三十郎」。森田芳光のリメイクは最悪でしたな。ほとんどカット割も同じに撮っているから、じゃ、最後の「血飛沫ドバーッ」をカラーで見れるのかと早送りしながら最後まで見たら、そこだけ変えてやがった。まったく!じゃ、見るところがないではないか。
「椿三十郎」は、映画の雰囲気が明るいので「用心棒」より好きなのですが、やはり二番煎じの感はある。<自分で斬っておいて、敵の仕業に見せかける>とか、「用心棒」と同じ手を何度か使っているのである。しかも、「椿三十郎」の場合、目撃者を消すために、逃げ惑う門番まで追いかけて皆殺しにするのだから、見るほうはイヤな感じになる。この辺り、黒澤の感覚は戦後民主主義の我々とはズレがありますね。
「娯楽映画だから硬い事言うな、大人になれ!」(笑)という人がいるかもしれないが、娯楽映画だからこそ、観客を不快にさせない配慮が必要なのである。これは同じ黒沢の「天国と地獄」の時も感じた事だ。今回のバービー問題におけるワーナーの対応などもそうだが、観客の倫理的な不快感は、作品への好悪に飛び火するのだ。「椿三十郎」は完全なフィクションだから、それだけで済む話しだが、歴史が絡んでくるとそうはいかない。
話しが逸れたが、物語の終わりの方、三十郎が、椿屋敷に詰めている敵方をおびき出すために、若侍たちの嘘の集結場所を教えに行く。「俺が光明寺の山門で寝ていると・・・」しかし、光明寺には山門などないのである。「あ、これは嘘がバレるぞ」とハラハラしながら見ていると・・・御覧になった方はご存知の通り、まだ見ていない方は乞うご期待、ユーモア感覚溢れる見事な脚本の手際でした。こういうのをウィットと言う。
私の採点 10/10 キズはあるが、やはり、これほど面白い娯楽映画は、そうはないのである。
ではでは