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本日の表紙~タイのお守り・プラクルアン専門誌、「プラケージ」

akiyamabkk

​本日は、タイの仏教のお守りプラクルアンの雑誌を紹介。タイ人がよく首から下げている、お釈迦様やお坊さんの座禅姿をかたどったペンダント状のお守りのことである。雑誌名のプラケージというの「高僧」を意味するパーリー語。元は仏教の経典「三蔵経」の注釈に引用された有徳の学問僧を意味する言葉だった。現在のタイでは元々の意味は忘れられ「お守りなるほど霊力の高いお坊さん」という意味で使われているようだ。


タイのプラクルアン市場では、年間およそ700億バーツのお金が動くとされる。近年、急成長するオンラインでの売り買いを含むと、その市場規模はさらに巨大なものとなるだろう。お守りの単価も高騰し、ベンチャパキーと呼ばれて骨董的価値のあるプラクルアン5種は、時に数千万単位の根がつくこともある。昨年も、その中のひとつ「プラソムデットワットラカーン」が一億円を越える値段で取引され話題を呼んだ。(ちなみに、ヘリコプター事故で無くなったイギリスサッカーチームのタイ人オーナーは、プラクルアンの有名なコレクターで、この5種のお守りを全て所有していることで有名だった。)

雑誌についてきたお守り

この雑誌は、そういう高価なお守りではなく、大衆的人気ある有名なお坊さんが新しく発行したプラクルアンに特化して扱っている。表紙写真の僧侶は、タイ中部ピサヌローク県にあるチェディーコットトーン寺のブンミー住職。家人に聞くと「知らない」ということだから、全国区のお坊さんではなく、ローカルレベルで人望のあるお坊さんなのだろう。こういうお坊さんが、プルークセークと呼ばれる儀式をして霊力を吹き込んだお守りが、寺の増築あるとか、何かの記念日の折に配られ、人気のあるお坊さんの場合にはお守りをもらいに人々が殺到する。こういう新しいプラクルアンをまめに取材して紹介することがこの雑誌のウリだろう。そして、定価60バーツの雑誌に、雑誌で紹介した僧侶のプラクルアンがおまけについてくる。(右上に貼ってあるのがそれである)ネット全盛の時代に「プラケージ誌」がしぶくとく生き残っている理由がこれだと思う。


プラクルアンのコレクターたちは、お守りの霊力を信じ、信仰心から集めてはいるのだが、自分の持っているお守りがひょんなことで大化けして、値段が上がることも一方で期待している。例えば、あるお守りを身につけていた地場のヤクザが、ライバル組織に暗殺されかけだが、至近距離から拳銃で狙られたのに一発も当たらなかった・・・と、こういう風な事件が起こって、お守りの値段が急騰するということもありうるのである。これは、バンコク近郊の「護身用の入れ墨」で有名なあるお寺のプラクルアンに実際に起こったことである。


しかし、あくまで仏教のお守りだから、お金儲けの部分を前面に出すわけにはいかない。なので、プラクルアンを取引する時には「売り買い」と言わず「貸し借り」にあたるタイ語を使う。プラクルアンを「売る」ときには「貸してあげる」という表現を使うのである。こういうことに仏教の教えとかけ離れた不純さを感じる人もいるだろうが、お守りの霊力を信じなければ、経済的価値も生じないわけだから、プラクルアンは、信仰心と射幸心の間の微妙なバランスに乗っかって成立しているビジネスだと言えるだろう。また、この雑誌が扱っているような安価なプラクルアンは、普通のタイ人がささやかな夢を託す、宝くじにも似た射幸的娯楽と言えるかもしれない。


インターネットの普及で、印刷物としての雑誌が次々と廃刊していく中、プラクルアン雑誌が、本屋の棚で比較的健闘しているのは、ネットとは縁遠かった人たちが主な購買層だからだろう。しかし、それも、あくまで「今までの」話で、こういう雑誌が書店から姿を消すのも時間の問題だと思われる。今や、プラクルアンもオンラインで売り買いされるようになり、「ネットにアップするプラクルアンの写真をキレイに撮るための講座」まで開かれる時代なのである。



プラソムデットワットラカーン 

どうです。ちゃんと斜めから光をあてて、立体感を出しているでしょう。これは、カメラを真上に固定する器具を使って撮られたその道のプロの写真。こういう風に撮れるように講習を受けるわけですね。


<了>


参考



プラソムデットワットラカーンの写真は、Wikimedia Commons の Ya thonawanik 氏による



        

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