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◇木下恵介の「陸軍」(1944年)のラストシーン ※タネアカシそのもの

akiyamabkk


木下恵介の「陸軍」。1944年の公開だから、ちょうど80年前の映画である。日本映画だし、公表から70年以上が経過しているから、チャップリン協会やディズニーがなんと言おうと、日本の法律に則りパブリックドメイン入りしたとみなす。(笑)


このシーンは、戦時中、九州の連隊が実際に出征する機会を利用して撮影された。(ここに写っている兵士の大半は戦死したのだそうだ。) しかし、陸軍の全面協力を得て制作した映画で、こういうラストシーンを作るとは!


息子の出征をあからさまに嘆いている田中絹代は、明らかに周りから浮いているのである。周りにいるのはエキストラでなく、出征兵士に歓呼の声をあげる本物の群衆のようなのだ。演出したシーンを実写と繋げた可能性はなきにしもあらずだが、おそらく、田中絹代は、あの時代の現実の中で、ホンモノの「空気読まないやつ」になっているのである。


この映像を見たのは随分前の事だが、「日本にこんな映画監督がいたのか」と感動した。しかし、考えてみると、この母親は何も出来ずにただただ嘆いているだけの無力の人で、これは、木下監督が戦後に作った「二十四の瞳」の大石先生と同じなのですな。だから、「十分に進歩的反戦的でない」などと言うつもりはなく、戦前も戦後も一貫している木下恵介は「偉い人だなあ」と思うのである。


この映画のこのシーンを作った事で、木下恵介は軍部に睨まれ、一時監督を辞めて田舎に引っ込んだ、とどこかで読んだ。ホモセクシャル説の根強い木下監督は、検閲の軍人に「女々しい映画を作るな!」と罵られたそうだが、この人の実際にやった事を見ると、これほど「男らしい」、剛直な人はいないのではないかと思う。女傑であっても、LGBTQ傑であっても良いわけだが。


このシーンをYouTubeにあげてくれた方に感謝したい。YouTubeがなかったらこのシーンを見る事はなっただろう。


ではでは

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