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今週の表紙~「抗プラユットワクチンのブースタードーズ!野党連合と院外反対派の共闘」

akiyamabkk

今回もプラユット政権批判の見出しである。マティチョン誌はそれ以外の表紙であることが、ほぼ無いようだ。


ここ2週間だけでコロナ感染者が10万人近くでた。感染拡大に歯止めがかからない。危機的状況を受けてプラユット政権は、今までの方針を大幅に転換し、①ワクチンの交差接種の実施、②医療関係者へのブースタードーズの承認、③民間機関や個人による簡易検査の容認、④軽症者の自宅やコミュニティ単位での自己隔離の奨励を閣議決定した。今までのコロナ対策の失敗を認めたかたちである。プラユット首相の信頼性は負のスパイラルに突入し、やることなすこと批判される状況になった、とマティチョン誌は分析する。


保守系のシンクタンであるTDRI(タイ開発問題研究所)も、「政府の見込み違いと、政策の失敗により、コロナ予防の初期の成功を台無しにしてしまったのは極めて残念」とし、1997年のアジア経済危機の時のように、独立委員会を発足させて、第三者機関が政策失敗の原因を検証して新しい政策を提示する必要があると、提言してている。


さて、今週の表紙だが、写真真ん中がソムバット・ブンガムアノーン。ここ10数年、タイの政治闘争の場面で必ず顔を出す反体制派の有名人だ。今回は「カーモブ(車のデモ隊)」と称して、繁華街に自動車で集まりクラクションを鳴らして政府への抗議の意思を示している。(おそらくミャンマーのデモからヒントを得たのだろう)「人民党」グループの若き指導者ペンギン君などとともにメディアでよく取り上げられる「時の人」である。


向かって右側の女性が、スダラット・ケユラパン女史。タクシン首相の元側近で、閣僚経験も豊富な野党側の大物政治家だ。2019年の選挙では、最大野党、タイ貢献党の首相候補となったが、その後、内部のいざこざから党を出て、現在、「タイ人が作るタイの党」の党首である。(おそらくタクシン元首相が次の選挙のために作らせたスペアー政党だろう)この政党が「人殺し政権を訴えるキャンペーン」というのを始めている。「憲法は、タイ国民が健康に生活する権利を保証しているのに、良質のワクチンを無料で提供できない今の政権は、憲法違反の犯罪行為を犯している」というレトリックである。「低品質のワクチンを打ち続けるほど、タイ国民が死んでいく」と煽って署名活動を進めていて、50万署名が集まったら国民を代表して政権を訴えるのだそうだ。


向かって左の男性は、最大野党、タイ貢献党のアドバイザー、プムターム・ウェ―チャチャイ氏。この人が、野党と協議して内閣不信任案の提出を取りまとめた。アドバイザーの仕事にしては重要すぎるようだが、タイ貢献党は、その前身であるタイ人民党、その前のタイ愛国党と、続けざまに解党判決を受け、党執行委員の公民権が停止された苦い経験があるので、重要人物を顧問格にとどめて温存する作戦をとっているのである。このプムターム氏が、「今回の不信任動議では、野党と国民、官僚が一緒になって政権の失敗と腐敗を暴いて倒閣に追い込む」と言っているのだそうである。つまり、野党が国会で政府を追及する一方で、街頭では、反対派グループがデモを繰り広げ、スダラット女史の政党(今年3月に発足したばかりだから国会議員はいない)の訴訟キャンペーンとも共闘するということである。


これが今週のマティチョン誌の表紙の意味だ。野党連合の不信任動議を、街頭で反対派が「ブースト」することでプラユット政権を退陣に追い込む、これがマティチョン誌の思い描いている倒閣のシナリオなのだろう。


そうはうまくいかないと思いますが・・・。


<了>







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