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◇今更ながらヒトラーのドキュメンタリーを見る

akiyamabkk


映画配信サイトで、ヒトラーのドキュメンタリーを見る。六回シリーズ。ナチス全盛時のドイツでCBSの特派員を勤めたウィリアム・シャイラーを「語り部」として、ニュールンベルグ裁判の映像と音声に、歴史専門家や関係者のインタビューを加えて、ヒトラーの権力奪取から没落までの過程を描いている。Netflix制作。再現映像を随所に使った、いわゆるドキュドラマである。日本語字幕あり。


ニュールンベルグ裁判のフィルム映像は合計で35時間くらいだが、音声テープは1200時間くらい残っていて、ほとんどが最近になって公開されたものだという。このドキュメンタリーでは、新しく公開された被告人等の音声をふんだんに使用し、その本物の音声に法廷内の再現映像を被せて、よりリアルに法廷シーンを再現している。これだけの長尺だと、写真ではどうしても映像が単調になるのである。また、「語り部」としてのシャイラーはラジオの放送記者だから、要所でその音声を使い、著作から引用した部分は、シャイラーの肉声から復元した音声に語らせているのだ。その他の歴史叙述も、専門家、証言者のインタビューで構成していて、プロのナレーターによるナレーションは存在しない。この辺りが、このドキュメンタリーの手法的な新しさで、エンターテーメント性と歴史記述の堅実性の両立を狙ったのだろうと思う。


全6篇を2日かけて見たが、いろいろ知らないこともあって面白かった。ヨーロッパがロシアのウクライナ侵略にあれほどナーバスになっている理由が改めて腑に落ちた。自国民族が居留する地域にまず侵攻し併合を認めさせた後、それ以外の領土に攻めこむという侵略の手法がナチスとそっくりなのだ。現代ロシアの総統閣下は、ヒトラーのような電撃作戦は取らなかったが、もし、ウクライナ側が抵抗していなければ、ロシアによるクリミアの事実上の併合は、現代版の「ミュンヘンモーメント」となったかもしれない。時間的に前後するが、キエフ侵攻を決めた時、老いたマッチョ独裁者の脳裏には、オーストリア国民に歓呼を持って迎えられたウィーンでのヒトラーがあったかもしれない。


この後、もういくつかナチスもののドキュメンタリーを見て、「シンドラーのリスト」を見るつもり。なんと、まだ見ていないのだ!それからチャップリンの「独裁者」を再見する。こちらは配信サイトにはないが、探せばどこかにあるだろう。チャップリンがこの映画を作ったのは、なんと、1940年、第二次大戦が始まってはいたが、アメリカ国内でのヒトラーへの警戒心はまだそれほど高まっていなかった。今更ながら、チャップリンの先見性に驚かされる。


ヒトラーとホロコーストを復習した後は、中東関係のドキュメンタリーを幾つか見てバランスをとるつもり。これが、私の今年の夏の過ごし方である。いやー、我ながら暇ですなあ。



ではでは


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