本日の表紙~「プラチャチョーン(国民)ではなく、プラハーン(処刑すること)がお好き?」
週刊マティチョンのプラユット批判が止まらない。見出しは、「(プラチャーチョーン=国民)ではなくプラハーン(刑に処すること)がお好き?」といつもの駄洒落で、「ラックプラチャチョーン(国民を愛している)」と言った首相の言葉尻をとらえて皮肉っているのだが、プラハーンというのはラッタプラハーン(政府を廃止する=クーデタ)やプラハーンチーウィット(命を終わらせる=死刑)などという風に使われる言葉で、相当に過激な意味が込められている。
論説記事本文では、元下院議員でソープ王のチューウィット・カモンウィシット氏の批判を引用する。
6月26日、労働者用簡易宿舎のロックダウン(建設現場を一か月間ストップさせる!)と、店内での飲食禁止措置を発表した時の、首相の態度が軽々しすぎると言うのである。首相はその時、「ジャチャア!(そういうことね!みたいなニュアンス)」という語尾を使って、報道陣の笑いをとった。深刻な雰囲気を和らげるためにしたのだろうが、今回の措置が国民生活に及ぼす影響の深刻さをえると、首相のふざけた態度に失望する国民も多かったのではないか。またそのあと報道陣にして見せたVサインも何に対する勝利なのかわからない、という指摘である。
週刊マティチョンが引用するもう一人の論者は、元外交官のラット・チャリーチャン氏。こちらは国民感情からではなく、政策面から首相を批判している。ラット氏は「タイはこの200年間経験しなかった未曽有の危機を迎えようとしている」とし、以下の点を挙げてプラユット政権を糾弾している。
1.WHOのCOVAXに参加しなかったこと。そのため、タイは質の良いワクチンを、タイムリーに十分な量、調達するチャンスを失った。
2.ワクチンを自国で生産しようとしたこと。
3.効果が疑わしいシノヴァックのワクチンを大量に、しかも高値で購入したこと。
ラット氏は、第三の点をとりわけ致命的な誤りして挙げ、ほかに安くてよく効くワクチンがあるのに、あえてシノヴアック製ワクチンを大量購入した理由を、明確に国民に説明していないと批判して、「後ろ暗いことがあるのではないか」と推察している。
次に週刊マティチョンは、首相がコロナ規制再強化の会見を開いた6月26日、自殺を遂げたある女性のことを書いている。プラカイファー・プーンドゥアン。30歳。フリーのミュージシャンで、「プラカイファチャンネル」というサイトを持つユーチューバーでもあった。
彼女はコロナ禍で失業中だったが、ユーチューブで他人を励ますのが常だった。一年前の2020年5月20日、この日も彼女は、「コロナを乗り切ろう」とリスナーに呼び掛け、こういう文章を綴っている。
コロナで失業した人、手を挙げて
私はフリーの歌手、二か月仕事がない
全部キャンセルされた 収入はゼロ
すべての職業に意味があると思う
音楽だって人の心をいやすことができる
でも他のことをやってみることも大事
得意じゃないこともやってみるから
自分の得意なことを発見できる
歌を歌い楽器を演奏する以外のことをやる
全ての危機の中にチャンスが潜んでいると信じている
心を開き、現実を見つめなおすこが大事ですね
もう一度、皆さんに励ましの言葉をおくります
ああ、我々は、何度このような空虚な励ましの言葉を自分につぶやくことで、かろうじで生き延びてきたことか!しかし、彼女は力尽きてこの一年後に自殺を選んだわけだ。
コロナは人を殺すが、政治の貧困も人を殺す。プラユット首相が「ラックプラハーン」がどうかはさておき、この点はマティチョン誌に同意しますね。
<了>
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