<プラユット首相、改憲審議で政権与党にクギ>(タイポスト紙)
タイポスト紙2021年6月24日号
※タイポスト紙は、政治評論家のプレーオ・シーグンが、バンコクポストグループから独立して設立した新聞である。ポスト社には、ポストトゥデイというタイ語紙があるが、数年前にオンライン紙に移行している。タイポスト紙は、発行人と主筆を兼ねるプレーオ・シーグンの政治評論が売りものである。
トップ記事の見出しは、英語紙流に最上段にある。政治評論が売りの新聞だけに、トップはコロナではなく政治ネタ。
◇「プラユット首相、憲法議論で与党に背を向ける」「憲法144条、185条の改正は汚職の抜け穴となる」「両院議会、議論過熱、下院と上院が小競り合い」
※憲法144条とは、予算案の審議で、国会議員が政府提出以外の予算項目の追加や増額を動議することを禁じた条項。(予算の減額、切り詰めの動議なら許される)185条は、議会外で国会議員が、私的利益のために、政府機関、国営機関へ影響力を行使することを禁じた条項。後者はともかく、前者は、民意を政府予算に反映させることを制限する条項にとれないか?現憲法は、政治家全てが汚職するものという生悪説に立っているようだが、では、官僚や軍、警察はどうなのか?
現行の改憲審議では、各政党が13の改憲案を提出しているが、最大与党のパランプラチャーラット党も改憲案を出し、その中にこの144条の改正も含まれていた。それを、プラユット首相が、「144条の改正は汚職の抜け穴になる」と切ってすてたため、上述の見出しになったわけだ。しかし、どうしたことか、国会論議の模様は、「議事録か?」と思うほど詳しく報道しているのに、144条、185条はどういう条項であるのかの説明は全くない。結局憲法の原文を当たらなければならなかった。以下、仏歴2560年憲法の英訳。
◇「コロナ禍の国民をご心配に、シノファームワクチンを寄付」
※チュラポン王女がシノファームワクチン25,600回分を寄付。ワクチンは、高齢者、障碍者、困窮者への接種に使用される。
◇「デモ隊阻止にコンテナ。チャトポン<鍋を叩く、首相府で野宿する>と宣言」
※今日は、民主記念党の付近と、首相府前でデモがある予定。前者は、左派の「人民党」が組織。後者は、赤シャツ軍団によるもの。赤シャツデモの指導者であるチャトポン・プロームパンがテレビ出演し、「明日(本日)のデモでは首相府に居座るかもしれない」と発言したという。このテレビ出演でチャトポン氏は「自分たちは国王陛下を元首とする立憲民主制を絶対的に支持している」と発言した。「人民党」らの急進左派と一線を画すためだろう。
◇「死者数過去最高、コロナの制圧は<たこ焼き戦術>で」
※6月23日の死者数は51人と過去最高。感染者数3174人。いっこうに収まる気配のない感染状況に、一部の専門家の間では「少なくとも一週間のバンコクのロックダウンが必要」と主張する意見も出始めた。<たこ焼き戦術>と訳したが、原文は<カノムクロック戦術>である。カノムクロックとは、たこ焼き用の鉄板で焼く、たこ焼き状の甘いお菓子のこと。クラスターを発見したら、その地区の住民にワクチンを集団接種し、感染を外に広げずに小さな単位で抑え込む対処法を言う。たこ焼きのようにお互いを分離するということだ。しかし、たこ焼きを焼く時は、穴の周りに生地がはみ出て、くっついてしまうものなのだが・・。
◇「フィッチレーティングス、タイの成長予測を1.8パーセントに引き下げ、金融政策委員会、政策金利を半分に」
※フィッチ社(Fitch Ratings Ltd.) は、2021年のタイの成長率予測を3パーセントから1.8パーセントに引き下げた。また2022年の成長率も、4.7パーセントから3.9パーセントに引き下げ。政策金利も0.5パーセントになった。プラユット首相が「開国」を急ぐ理由はこれだろう。フィッチ社は英国に本拠を置く格付け会社。
裏表紙
◇「スモーカーに警告、電気タバコにも健康リスク」
※カリフォルニア大学が、マウスによる実験で各種電気タバコの健康リスクを調べたところ、動脈の欠陥が34パーセント~56パーセント硬化し、普通のタバコと同じように心臓病のリスクが高くなることが分かった。ラーマティボディ大学医学部が記者会見を開いて、スモーカーに警告した。
◇「中国がタイ産果物の検査を要求、タイ側はコロナウィルスの汚染はなしと自信」
※北京の防疫当局が、タイ産のドリアン、マンゴステイン、竜眼、ココナッツに対して、コロナウィルスからの安全が確保されているか検査したい要求してきた。これに対して、タイ農業安全局は「タイ産の果物にコロナ汚染はない」と自信を示している。検査は7月、ズームで両国関係当局をつないで行われ、農園、裁断する場所、包装、輸送状況まで、中国側に見せながら説明するのだという。中国はタイ産農作物の最大の輸入国だから、こういう要求もむげには扱えないということか。
<了>
参考