不定期テレビ日記〜2023年05月
2023年5月2日(火)
ノート 結局、4才になった孫娘の劇場映画デビューは、スーパーマリオムービーとなった。近くのシネコンへ昼前に到着。我々が一番のり。後方まん中のシートを選ぶ。200バーツ。前方の座席は160バーツ。一番後ろ、ニ列あるカップル用ソファー席は、ビュッフェの食事付きで二人で1000バーツなのだそうだ。このシネコンには、4〜500人は入りそうなこういう映画館が全部で六つ入っている。以前は場末とも思えた地区に、これだけのシネコンがあるのだからバンコクも様変わりしたものだ。もう単館の映画館は姿を消したのではないか。それにしても、メーデーの休日に、我々三人を含めて観客が僅か7人である。経営が成り立つのか、と心配になる。帰ると言い出さなかったところを見ると、孫娘は、映画を気に入ったのだろう。家に戻ると、ジャック・ブラックが歌うところの、亀の王のピーチ姫への求愛ソングを、iPadで繰り返し聞いていた。
2023年5月5日(金)
ノート プリゴジンの怒号。20年前なら映画の一シーンだと思ったろう。こういうものが、冷房の効いた自分の部屋で、寝転んで見られる時代になった。普通なら、驚いて腰を抜かすような映像を、タブレットを片手に寝転んで見ているのだ。そして、もう一方の手で、これを書いている。
2023年5月14日(日)
◇小津の「突貫小僧」のロングバージョン見つかる
小津安二郎の「突貫小僧」、やはり、O Henry の The Ransom of Red Chief が原作だったのですね。以下は、国立映画アーカイブに保存されているものより6分長いフィルムが出てきたという朝日新聞の記事。
イタズラ小僧に手を焼いて、誘拐者がほうほうの体で、誘拐した悪ガキを返しにくるというお話しである。もう珍しくもない筋立てだが、このストーリーの原型を最初に考え出したO Henry はえらい。
何故、こんな事に興味があるかというと、最近、O Henry の短編の朗読を聴きながら寝るのが日課になっているからだ。で、たまたま、この短編を聴いた後、「小津の突貫小僧に似てる話しだな」と思っていたら、朝日のこの記事が出たので、「やっぱり!」と嬉しかったわけだ。
小津安二郎の映画に出てくる男のガキは、生意気で、こましゃくれていて、ぜんぜん可愛くないが、突貫小僧はその原型だろう。間抜けな誘拐犯を演じているのは、岡田某(吉田喜重の奥さん、名前ど忘れ)のお父さんだと思う。映画は、抱腹絶倒とまではいかないが、それなりに面白い。
ただ、無声映画なので、国立映画アーカイブは音楽をつけて公開する必要があるだろう。(自分が見たものはついていなかった)でないと、流石に最後まで見れない。
2023年5月14日(日)
ノート タイの総選挙、野党陣営2党で500議席のうち300くらい取りそう。しかも、比較第1党は、タクシンのタイ貢献党ではなく、貢献党よりもう少しリベラルな前進党が取りそうな勢い。他の少数野党で民主陣営に着きそうな政党を合わせると310くらい行くのではないか。しかも、比例票では2党で三分の二を取っている。普通なら野党圧勝ですんなり政権交替のはずだが、連立して政権が取れるかどうか不透明なのは、軍が任命した250人の上院議員にも首相指名権があるからだ。(厳密には任命議員は200人で、50人がなんちゃって公選議員だが、前回の選挙では上院250人のうち249人がプラユット大将を首班指名している。) カオソット紙によれば、プラユット暫定首相は選挙の敗北を認めて「少数内閣の樹立は考えていない。民主主義の原則に従う」と述べたそうで、この言葉に望みをつないで、円滑で民主的な政権の移譲を期待したい。
2023年5月17日(水)
ノート タイ社会でもこの頃やっとマスクが取れてきた。コロナへの懸念は薄れていたのだが、PM2.5の粉塵が世界有数の酷さだったから、大気汚染対策でマスクをつけていた面もあったのだ。その粉塵問題も、雨季との端境期で少し雨が降り始め、どうやら治ったったようだ。気象局によれば、タイは来週から本格的に雨季に突入。6月、7月は例年より雨が少なく、8月から雨量が増えるという。
2023年5月18日(木)
ノート 思ったより急速に前進党の連立工作が進展を見せている。今日は、8党(313議席)で共同会見し、ピター連立内閣樹立の意思を宣命する予定。場所は、バンコクのホテルオークラ。問題は、前進党の不敬罪改正の公約を批判して、首班指名に賛同しないとする政党や議員が出始めている事。ここは前進党の政策の肝であり、若い世代の支持を受けた理由でもあるから、党として譲れないところだろう。不敬罪改正は、日本で言えば憲法9条改正に匹敵する歴史的変革だから、いろいろ抵抗はあるだろうが、民意は選挙で明らかになったと思う。憲法も王室も、民意と時代の変化につれて変わっていくべきものではないだろうか?教条に固執することにより、却って、その教条が守ろうとしているものを危うくする事もある。また、タイの不敬罪改正も、日本の憲法第9条改正も、国際的には極く常識的な主張に過ぎないのである。
2023年5月19日(金)
ノート 結局、ASEANはミャンマーのクーデター政権に対して何もできないだろう。こういうものを国際的な安全保障の枠組みの理想形とあおぐ日本の政党があるようだが、サンドイッチマンではないが、「ちょっと意味わかんない」。反共同盟から脱皮したのがよほど嬉しかったようだが、民主主義、人権という立場からすると、今、むしろ必要なのは反共同盟ではないかと思われる。しかし、ASEANが民主、人権で足並みを揃える事はないのである。
挿絵はRadio Free Asia から。
Leaders of ASEAN wrapped up a two-day summit in Indonesia expressing "deep concern" about the escalation of violence in member-state Myanmar. But they insisted on sticking to a five-point consensus the Myanmar junta agreed to in April 2021. Cartoon by Rebel Pepper.
2023年5月20日(土)
ノート いやあ、広島でサミットをやって良かった。しかし、
銃口を突きつけあえば撃てはせぬ 相互確証破壊の平和
と、これが現実だから取りあえずは仕方ない。とち狂った侵略国の核の抑止に使われる「きれいな核」の存在は必要だと思わざるを得ないのだ。
座して待つ死の傍らの千羽鶴 万斛 プーチンに「戦争やめて!」と糸電話 では太
答えなき事に答えがあるごとく 振る舞う人のうさんくささよ
2023年5月21日(日)
ノート ゼレンスキー会見。現在の破壊され尽くしたバフムトの姿と被爆後の広島の光景が重なると述べたのは、もちろんプロパガンダの言葉だが、現在、侵略を受けている当事者の正直な感想ではなかったか。別に原爆が使われなくても、建物は破壊されるし、人は死ぬのである。自分には、彼が、被爆者に対して、「戦争の被害者はあなた方だけでは無いのですよ」と言外に言っているようにも聞こえた。
正直言うと、自分は、被爆者のある種の「特権意識」に少し居心地の悪い思いがした。被爆者は大統領に無理筋の説教をする前に、同じ戦争被害者として、ウクライナ国民に満腔の同情の意を示すべきではなかったか。今、現在、ロシアの核の脅威に晒されている国の指導者に、西側の核をまず廃棄して範を示せ、とでも言わせたかったのか?おそらく、被爆者たちの言葉は、ゼレンスキー大統領の期待したものとは違ったし、理解不能な異様な言説と映ったのではないか?
ゼレンスキー大統領は、現在の広島の姿に、将来のバフムトの希望を見た、とも付け加えている。これも、日本の復興援助を期待しての事だろうが、彼の本音でもあると思う。(現在、戦争を戦っている人に打算のみを見るのは、むしろ、「平和ボケシニシズム」と呼ぶべきだろう) 同時に、日本からは武器の支援を求めているわけではありませんよと、日本政府への配慮も滲ませている。
完全フリーな記者の質問に、即興でこれだけ答えられるのはすごい。
2023年5月23日(月)
ノート 8政党、23項目の政策協定に合意、調印。いつの間にか13項目から増えていた。不敬罪の改正は、この中に含まれない。上院への配慮もあるが、改正に合意しない政党も連立に含まれるからだろう。前進党のピター党首は、党として法案の作成、議会への提出は進めていくと語っていた。(前進党は、一昨年2月にも、改正案を提出しようとして却下されている。)一方、この政策合意は前文的なパートで「国王を元首とした民主制度の護持」「王室の権威に影響を与える政策を取らない」と語っている。行政と立法は別という論理、不敬罪の改正は必ずしも王室の権威を傷つけない、というロジックのようだが、軍選出の上院議員に通じるだろうか。
徴兵制の廃止、志願制への移行は、共通政策として維持されたが、「戦時には動員が可能」と但し書きがついた。婚姻動員法も入った。政策合意にはイスラム政党も調印したが、ムハマッド・ノーマタは、民主的政権への移行を優先して、多く異議を唱えなかったようだ。この政権ができれば、婚姻平等法はおそらく成立するのではないか。マリファナに関しては、違法薬物のリストに戻すとあったので禁止するのかと思ったが、会見での説明を聞くと、管理を厳格にして、販売は続けさせる方針のようだ。変わったところでは、酒造の自由化が公約に入っていた。候補者の中に、クラフトビールを製造して逮捕された人がいたが、残念ながら落選したようだ。
公約、第一番に掲げられたのが、憲法の改正。政権が発足すれば、軍の影響力を排除した民主憲法を作るのが一番目の仕事だろう。六割以上の議席を取った政党連立の政権樹立の成否が、大半が軍任命の上院の票に左右されるのは、いかにも異常である。新憲法の下で再選挙し安定政権を作るのが、一番良い流れではないか。そのためには、小異に拘らず、まず政権を発足させることだろう。
2023年5月25日(木)
ノート ゼレンスキー大統領の出世作「人民の僕」の惹句、
What if an ordinary man, honest and principled teacher, becomes the President?
善良な床屋ではなく、正直で厳格な教師の役だったのだ。
ここで、英語字幕付きのものが見られる。
ノート ミャンマーでクーデター以降急増する仏教学校が、子供達にイスラムへの偏見を植え付けているのだという。仏教が一神教の偏狭さを真似てどうする。こういことをやっていると、我々(私も一応、聞かれればブディストと答える一人)仏教徒は、ムスリムの不寛容さを批判できなくなってしまう。フロンティアミャンマーの記事から。
2023年5月30日(火)
ノート 軍の強烈なサポーターだという女性歌手が、ヤンゴンの自宅前で狙撃され重体だとのニュース。ゲリラ内部にソースを持つと思われるこの「ニュース通信社」は、「都市の反政府ゲリラ」の犯行だと、ほぼ断定している。軍の熱烈な支持者とはいえ、年配の女性歌手をターゲットにした犯行はテロリズムと言わざるを得ない。こういう事が頻繁に起きると、反体制の武装組織は普通の国民の支持を失うのではないか。そして、亡命政府には、彼らを統制する力はなさそうなのだ。
Chidwin News Agency から
Li Li Naing Kyaw, a singer and a hardline pro-military supporter and worked as Dalaan for the junta regime, was shot and critically wounded in front of her residence in Yangon City, Myanmar on Tuesday.
The incident occurred at her residence in Yangin township at 7:05 pm local time [Myanmar] today and Li Naing Kyaw was rushed to a nearby hospital where she is currently receiving treatment in ICU.
Chindwin learns that the Urban Guerrilla has carried out this covert mission and hit the junta's target who is a high-profile associate of the junta's generals.