不定期テレビ日記 2021年6月
2021/06/11
今日は長女が、ワクチン接種。ラマ9世通りのセントラルの駐車場で午後から。会社で加入している保険会社が組織した「職域接種」。アストラゼネカは若い人ほど副反応が強いということで、娘は頭痛薬を持参した。ワクチン不足がとやかく言われているが、それほどでもないよう。軍勤務の次女は昨日接種を済ませている。こちらはシノヴェック。毎週金曜は週刊マティチョンの発売日。近くのデパートの本屋まで買いに行く。三週連続で政府のワクチン供給体制への批判だが、始まってしまえば、結局政府に有利に働くだろう。これは日本も同じ。南タイのワクチン接種が進まない理由の一つは、歴史的な中央政府への不信感のほかに、中国製のワクチンに豚骨から抽出したゼラチンが入っているとのデマが流れているためだという。チュララーチャモントリー事務所(タイのムスリムを代表する組織)が「豚は入ってない」と公式に否定の声明をだした。(週刊マティチョン0611~17号より)
2021/06/12
人気キャスター、ソラユット・スタサナチンダーが週末のニュース番組に復帰してから、もう一月くらいたつだろうか。この人は、この番組のCM収入を不正に申告した罪かなにかで(スラユット氏は番組を制作する会社の社長でもあった)10数年の長期刑に服していた。時々、この人が刑務所の中でニュース番組をやったりしてるのが報道されていたが、恩赦によって5年ほど出てきて、こうしてまた同じニュースのキャスターをやっているのである。経済犯には比較的甘いというのは日本にもあるが(ホリエモンなどがそうだろう)、さすがに同じ番組のキャスターに復帰することはないと思う。「3回得度する人間はダメな人間だ」という言葉があって、タイ人は犯罪や大きな過ちを犯したら、出家して人生をリセットするのが常なのだが、三回もそれをやるような人間は更生の見込みがないという意味だろう。裏を返せば、二回までなら許すということか。そういえば、スラユット氏は出家せずに、出所して間髪いれずにキャスターに復帰した。それからしばらくして刑務所でのコロナ感染の大拡大となるのだからラッキーな人だ。
2021/06/13
娘たちの接種がすみ自分も明日予約がとれたので(アストラゼネカ)、ワクチンは足りているものと思っていたら事情は違っていた。お昼のスラユットのニュースによれば、モープローム(Doctor readyという意味)のアプリを使っての予約が完全にダウンした。加盟していたバンコク市内の10数か所の病院がすべて「ワクチンがないため予約が受け付けられません」とホームページで宣言したのである。「ご不信の方は保健省にお問い合わせください」という但し書きまでつけて。モープロームはバンコク都が管理するアプリサイトなので、保健省とバンコク都庁との確執が噂されている。Doctor Ready が Doctor Not Ready になってしまったわけだ。明日よりバンコク市内の公園が使えるようになる。アパートの子供用遊技場も使用可能になるだろうか。
2021/06/14
パヤタイ2病院でワクチン接種。11時半の指定の時間より早くいくと5番の整理券がとれた。全体で2時間くらいかかったか。既往症などを答える問診票に記入し、血圧、脈拍数測定後、接種は一時前には終了。30分休んで係の人から2回目の接種日を記した紙をもらう。10月2日、4か月後である。私立病院でもあり、全体的として効率のよい良質なサービスが受けられたように思う。タクシーで帰宅。先日AZの接種を受けた娘から、接種後お腹がすき喉が渇くと聞かされていたので、家人にミネラルウォーターとパンを持たされていたが、お腹もすかず喉も乾かない。帰宅してからも普通にしていたが、寝る前になって少し熱が上がった体感があり(接種後8時間くらいで熱がでるのだそうだ)、寒気がしてきたので、掛け布団を2枚にして寝た。普通は一度起きて小用に立ち、また寝るのだが、朝まで起きなかった。家人によると、珍しく寝言で何かうなっていたらしい。朝起きると熱は下がっていた。副反応は大したことなかったが、家人の命で、接種前後の三日間はビールとコーヒーが飲めない(カフェインがだめなのだそうだ)のが苦痛である。
2021/06/15
接種翌日。少し体のだるい感じがあるが、それほどでもない。散歩する。家人によると二日目は少し運動した方が、ワクチンが体中行き渡るのだという。忠実に実行する。先日記した「モープローム」(Doctor Ready)に続いて、「タイルアムチャイ」(「タイ人よ、心を一つにしよう!」という意味)という登録機関が、やはりワクチン不足で今日以降の接種がキャンセルされるという。前者は全国を対象(その中でバンコクの病院だけがワクチン不足となった)、後者はバンコクに住民登録がある人が対象である。カミさんは、「タイルアムチャイ」の方で、来月の接種予約がとれていたのだが、どうなることやら。当人は「そのころはワクチンの供給が安定しているだろうから大丈夫」と楽観しているが。娘も自分も、バンコクで一回目のワクチンが受けられたのは「職域接種」のおかげである。カミさんのようなシステムの外にいる人たち(専業主婦)が、割をくっている形のよう。職場における感染が一番多いというデーターに基づいてか、政府も職場での接種を優先しているようだ。
2021/06/21
ワクチン接種から一週間経過。血栓の症状はなし。一回の接種では、デルタ型にはあまり効き目がないらしい。アストロゼネカの場合、二回目の接種は4か月後だから、これで変異種に対応できるのか。政府が3か月後の二回目接種にまた方針転換したという話もあるが、いずれにしろ間隔があきすぎる。シノベットの方は一月後に二回目接種だが、こちらは、インドネシアの医療関係者が接種後に大量感染した事例などでてきて、本当に効くかどうか疑わしい。タイ人は究極の選択だろう。他人ごとではないが。プラカノンのBTS駅で自殺があった。線路に飛び込んだのではなく、高架線の駅から道路に飛び降りたのである。38歳の女性。コンビニืの元店員。今月始めにコロナに感染し、完治はしたが職が見つからないのを苦にしたらしい。「誰も私を雇ってくれない」と遺書に書いている。「おまわりさん、あなたからうつされたのよ」とも遺書にあるのは、関係があった警察官がいたのだろう。女性は離婚歴があり子供が一人いる。コンビニの店員などしながら、田舎にいる子供に送金していたようだ。遺書に警官の名前を記さなかったのが、子持ちの30女の分別、優しさだとしたならば、悲しい。この警官も眠れない夜を過ごしていることだろう。タイ人の男はこういう時に出家するのである。
2021/06/23
逃亡中の連続殺人犯が、祖母の実家のある南部ラノーン県まで逃げて自首した。犯人は兵役を終えて間もない若い男だが、この青年、バンコク市内のコンビニでビールを買い物する時、三本パックの紙が破れて一本を割ってしまった。その分を払うか払わないかで、男性店員と口論になり、結局、払わずに店を出て数時間後、今度は拳銃を携えて店に戻り、いきなり、口論した30台の店員を射殺している。店内の防犯カメラには、若者が被害者の背中を足で突き、死んでいるか確認しているところまで、一部始終を記録している。この後、犯人は、パトンタニ県(バンコクの隣県)にあるコロナ軽症者の入院施設に押し入り、たまたま居合わせた50代の男性にいきなり銃口を向け射殺している。この時、若者は特殊部隊員のような赤いベレーをかぶり、軍服を羽織っていた。射殺シーンも、スキップを踏むような足取りで病院に入っていくところも、防犯カメラの映像が出ているが、何かが憑依しているような、取りつかれているような印象を受けた。映画「ジョーカー」を思い出す。
犯人の若者は、徴兵による兵役だが射撃の才能があり、特殊部隊の訓練を受けていた。アメリカに渡って、射撃の訓練を受けスナイパーになるのが夢だと周囲に話していたという。祖母の家に立てこもっている時、チャンネル3の昼ニュースを担当する人気俳優、ヌム・カンチャーイに電話をかけて、「兵隊時代にいじめを受けた上官への復讐が動機」と語っている。ヌムは途中から、自分のニュース番組が流しているライブ映像を、犯人がモニターしていることに気づき愕然として、番組スタッフにライブ映像を流すのをやめさせている。番組終了後、犯人からまた電話が入り「母親と話をした。これから自首する」と言ったという。キャスターのヌムはこの間の緊張が応えたのか、持病の心臓の病が悪化して、不整脈のため生放送中に席を立ち病院に運ばれた。
2021/06/24
四日前にアパートのプールが解禁となり、日課となっていた水泳を再開。二か月ぶりである。しかし、アパート側は警戒を緩めず(このアパートからも、把握している限りで7人がコロナに感染している)、一時に泳げるのは二人、一時間置きにプールを閉鎖して清掃する。(清掃の方はあまりやっていないようだが)今日は、撤去されていた屋外の椅子をもとにもどした。徐々に正常化が進んでいるが、これはコロナの感染者数が減っているからではなく、規制してもあんまり効果がないなら、経済を回そうという発想のように思われる。ワクチンにオールインしているのは日本も同じだが、タイはそのワクチンの調達が思うように行っておらず、効果の疑わしい中国製を接種の柱のひとつにしているのだから、風当たりは強い。アストロゼネカは、供給の遅れを理由に、第二次接種までの間隔を12週間から16週間に引き上げておいて、デルタ株が一回接種では十分に予防できないとわかると、8週間に引き下げる、朝令暮改、迷走ぶりである。
2021/07/04
一回目のワクチン接種から一か月たった。あれからタイ政府のワクチン接種方針は二転、三転し、最近では、高齢者、慢性病の患者に優先接種する方針に戻った。家人の7月11日の予約はキャンセルとなり、ワクチン入手の見通しが立った時に再募集するという。その代わり、糖尿で通院しているものや、明らかな肥満のけが或る者はワクチンが打てている。デルタ株の流行が始まってから、重症者は高齢者や慢性病の患者とは限らなくなってきた、というのが一般的な見方かと思うがどうだろう。政府のワクチン政策に対する不満は相当なもので、報道を通じても伝わってくるが、普段は政府びいきのうちのものも不満を言い始めた。シノバットを作っている製薬会社が、CPの同族会社だと言っていたが、本当かどうか。なぜ高くて(インドネシア政府より高く買わされたらしい)、効き目の怪しいワクチンを買うのか、という政府に対する疑惑の答えを、そこに見出しているわけだが。
今日のソラユットの番組、コロナ死の悲惨なケースをいくつも取り上げている。ナコンナヨク県の副知事が死に、その妻が死に、昨日はその40代の息子が亡くなった。バンコクのあるアパートでは、コロナで母親が死に、父親が入院中で、目の不自由な11歳の男の子が、アパートで一人で暮らしている。大家さんが男の子の面倒を見ているが、濃厚接触者だから近づくことができず、紐で食事の入った袋を釣り上げて渡している。男の子は4階くらいに住んでいるので、窓から釣り上げて弁当を受け取るのである。男の子がやたらに元気な声で、「はいOKです、準備できました」と答えるのが余計に不憫に思われる。ソラユット氏のニュース番組がこういう報道をしたら行政は動くだろう。父親が早く良くなるといいのだが。また、この番組で、コロナ感染者輸送用のバンと運転の労役を提供してくれるボランティアを募集していた。コロナ感染者が急増して、バンコク首都圏の病床数がひっ迫している。バンコクで感染した人が地元で治療したいと言う場合、地元の病院まで運び届けるサービスを提供しようというものだ。病人もその方が’安心だろうし、感染が集中する首都圏の医療負担も軽減できる、一石二鳥のアイディアということだろう。緊急事態におけるボランティアの組織は、タイのテレビの得意技である。スマトラ沖地震の津波の時も、バンコクを襲った大洪水の時もそうだった。とりわけソラユット氏の番組はそれでずいぶん人気を高めたものだ。今回もそれを狙っているのだろうが、人助けになるのなら、シニカルに見る必要もない。先の盲目の男の子のケースなど、面倒を見ている人が「ソラユットの番組ならば」と助けを求めてくるのだから、もうそれは一つの社会的機能を備えていると言ってもよいのだ。
2021/07/09
知り合いの店の従業員、タクシーで200バーツかけて(一時間はかかったろう)政府の運営するPCR検査場に行って、朝4時から並んだのに検査を受けられなかったという。前日から並んでいる人がいるのだ!彼女は、行きつけの屋台のおじさんがコロナに感染したので、検査を受けに行った。ただ不安だからというだけではなく検査に行く理由があったのである。カオソットオンラインが、前日12時前から首相府近くの検査場に並んでも検査が受けられなかった、ある初老の女性のことを紹介している。なんとこの人は前日に自分の母親をコロナで亡くしているという。これほど検査を受ける理由のある人が他にいるだろうか?タイ人がパニックになって検査に殺到しているのか?それとも、感染者の増大で検査まで手が回らなくなっているのか?おそらく後者だろう。民間病院の情報を検索してみても検査可能な数は50~100,多くて300くらいだ。これほど周りに感染者が出始めると、濃厚接触者だけでも大変な数に上るだろう。検査の供給体制が追いつかなくなってきている。これまでタイ政府は、原則感染者は入院させる方針だった。(「野戦病院」はそのためにある)しかし、この方針も転換して、無症状者や軽症者は自宅やコミュニティで自己隔離させることにするという。今日、対策本部のスポークスマンがそう発表した。ベッド数を増やすのは比較的容易だが(段ボール製のベッドを使ったりしている)、世話をする医療スタッフの数が足りなくなっているのだろう。
カオソット紙は、マティチョングループ系列の日刊紙で、マティチョン紙が知識層向けのクオリティ紙なのに対し、庶民向けの大衆紙である。印刷された新聞を廃止して、オンラインバージョンに力を入れた結果、現在ネットメディアとしてはアクセス数第一位だそうだ。この新聞のフェイスブックをフォローしているが、政治、社会面から芸能欄まで、幅広くカバーしていて、ここをフォローしていればタイのニュースはだいたい大丈夫という感じである。外国人向けには英語版のオンラインニュースも出していて、バンコクポスト、ネーションなど老舗英字紙にとっては脅威だろう。
マティチョングループは「タイの朝日新聞」と言っていいくらいのリベラル系なので、現在の政府には批判的である。タクシン、赤シャツ支持といってもいいかもしれない。メディアがクーデターで成立した政権(一応選挙でみそぎを得たが)を批判するのは当たり前のことだが、「ひいきの引き倒しの逆バージョン」のような批判も多い。カオソットはその系列紙だから、今回のプラユット首相の「コロナ失政」でも批判の急先鋒である。先ほどの「朝まで待って検査を受けられなかった高齢女性」のケースもカオソットのニュースだが、別の悲惨なケースもこのオンラインニュースが報道している。
寝たきりの母親と兄を介護しているある初老の男性がコロナに感染した。この人は本当は病院の看護が受けられたのだが、母親と兄の面倒を見るために家に残った。二人は検査を受けていなかったが、コロナに感染していることは、容易に予想がついたのである。男性は悪化していく自分の病状にもう先は長くないと思い、フェイスブックで「今夜が最後だろう。また生まれ変わっても兄弟でいよう」と兄あてにメッセージを残す。幸い、メディア(またソラユット氏の番組である!)がこのFBを取り上げ、3人は入院することができたが、母親は入院したその日に亡くなった。死因はコロナ感染によるものだったのである!
最近、こういう悲惨なニュースが毎日のように報道されている。プラユット首相は三か月の給料を返上したが、国民の怒りはその程度では収まりそうもない。しかし、一方で「デモなどしている場合か!」とも思うのである。