【再掲】タイフォークの名曲~カラワンの「あなたに花を届けよう」歌は、ポンシット・カムピーで。
※昨年7月8日に投稿。多少加筆あり。
喜納昌吉の「花」、タイのカラワンというフォークグループが、タイ語にして歌っている。題名は、「あたなに花を届けよう」。邦題は、今、自分がつけた。
まずは私の拙訳。歌は、ポンシット・カムピーで。
題 あなたに花を届けよう
この庭の花を全ての人に届けよう 近くにいる人にも、地平線のかなたにいる人にも あなたに希望を届けよう この庭の一面に 今咲いたばかりの花々を
あなたを励ますために あなたを励ますために 私からの贈り物として
決して衰えることのない太陽の光ように 燃え続けるかがり火のように 森を潤す流れのように 屈することのない大空のように
(間奏)
上のフレーズの繰り返し
みなさんにこの庭の花の香りをとどけよう あなたの夢がかなうように あなたの憂鬱が和らぐように 水が流れるように あなたが最期まで歩き続けられるように
あなたを励ますために あなたを励ますために 私からの贈り物として
(繰り返し)
そこそこタイでも有名な歌だが、元歌が日本のものであることは殆ど知られていない。実のところ、私も、カラワンの歌を喜納昌吉が日本語にしたのだと思っていた。メロディーも沖縄のものだけあって、なんとなく南洋っぽいのである。
日本から友人が来たときに、この歌を聞かせたら、冒頭部分を聞いただけでは、「花」だと分からなかった。タイ語は、中国語と同じで、言葉に声調、イントネーションがあるから、曲のイメージが変わるらしい。
例えば、冒頭、オリジナルでは、
花はながれーて、どこどこー、行くのー
と平板だが、これがタイ語だと、
コー(下がって上がる)モープ(上から下がる)ドーク(低い音)マイ(上がる音)ナイ(平声)スワン(下がって上がる)ニー(上がる)・・・
と、イントネーションがメロディーの中で細かく上下して、上でお聞きになったような感じとなる。
常々、「タイ人の作曲家はどうやってメロディーにあわせて詞をつけてるのだろう」と不思議に思っていた。「もしかしたら、これがタイ語の歌詞が深くならない理由かもしれない、意味よりも、声調を優先して言葉を選んでいくから、ありきたりの語彙に落ち着くのではないか?」・・・とまで思っていた。
しかし、これは、素人考えだったようだ。外国のボイスコーチがよく言及する「ボーカルスライド」という技術がある。ブルースの歌唱などでよく使われる、半音から全音高く、あるいは、低く歌い始めて、正しい音程にスライドさせるテクニックのことである。以下、参考まで、外国のボイスコーチによる説明。考えてみると、演歌の歌唱法なども、まさにこれなのですな。
このボイスコーチが実演してみせるボーカルスライドは、タイ語の第三声調(下声、上から下がる)と第四声調(高声、下から上がる)に他ならないことがわかるでしょう。第三、第四声調だけではなく、第一声調は平声と呼ばれ上り下りなしだから問題なし、第二声調の低声はひたすら低く、第五声調は下がって上がる音で、これもスライドのバリエーションとしてありうるから、西洋的な声楽のテクニックで、タイ語の声調はカバーできてしまう。しかし、タイ人歌手がこれをやる場合、このコーチの言う、極端、露骨すぎる「ボーカルスライドの悪い例」ということになるだろう。でも、それが、タイ歌謡の独特の魅力であるように自分は思う。
話が脱線した。タイ語の歌詞が「深くならない」と書いたが、自分は、「あなたに花を届けよう」の格調高い歌詞の方が、元歌の歌詞よりも好きですね。カラワンのバージョンを先に聞いたからかもしれないが、本歌のように説教くさくなく、深くはないけども耳と心に気持ちよく響くのだ。あまり深刻にならずに、この世を前向きに乗り切っていくことを良しとする、タイ人好みの歌詞だと、私は思いますね。
<了>