タイの国技であるムエタイは、長い歴史を持つ伝統的武術、スポーツであるとともに、年間50億バーツ(約180億円)が動くともされる大ギャンブルビジネスでもある。80年前に成立したギャンブル法で「認定スタジアム内で行われる賭博行為は合法」とされて以来、数少ない合法ギャンブルとして、多くのタイ人に親しまれてきた。今、コロナウイルスの流行によって、スタジアムは閉鎖され、庶民のギャンブルの場としてのムエタイは危機に直面している。収入が途絶え、ジムの閉鎖やムエタイに見切りをつける選手が続出しているのである。しかし、無観客で行われる有料テレビのムエタイ番組や、ワンチャンピオンシップに代表される国際的なスポーツエンタメグループ、独自のアプリでムエタイにベットできるオンラインサイトなどは、旧来のムエタイ業界の窮状をよそめに健闘しているようだ。地元メディアの報道から、曲がり角に来た国技ムエタイの将来像を占ってみる。