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アジアの「人権の守護者」となった元「反共ラジオ」のベトナム報道

akiyamabkk


記事見出し Vietnam police confirm arrest of two activists


あるNGOの調べによれば、ジャーナリストの逮捕者数はベトナムが世界で5番目に多いそうだ。昨年は、12月までに少なくとも19人が逮捕された。この記事では、政治系ユーチューバー2人の逮捕が報じられている。そのうちの一人は、共産党メディア(Communist Review)の元編集者で、彼の現在の YouTubeは、ロシアのウクライナ侵略批判をメインのコンテンツにしていたと記事にある。


権威主義政権がウクライナ戦争でロシアの侵略を擁護するのはめずらしい話ではなく、タイでも前の政権の時は(クーデターを主導した軍の司令官が首相だった)、ロシアに融和的で、侵略批判を自制するようメディアに圧力をかけているという噂もあった。ソ連時代からのベトナムとロシアの密接な関係を考えれば、ロシア批判が逮捕理由であってもおかしくはない。


このニュースを報道しているのは、かつて反共ラジオとされた Radio Free Asia (RFA)だが、最近、「RFAはいい仕事している」と思うようになった。今や、アジアの権威主義国家における反体制派の希望の灯火といった存在ではないか。ベトナム政府の人権弾圧など、主要メディアでは、ほとんどニュースになることはないのだから、弾圧を受けて孤立した個人やその家族にとっては、RFAに報道されるだけでも救いになると思う。


※RFAは冷戦終結後、CIAの管轄から、グローバルメディア庁の管轄へ移行した。報道時に「アメリカ政府の資金を受けている」と明記する点など、透明性、公正性への配慮は感じられる。ニュースの選択が完全に中立的であるかは別問題だが、これは、どういうメディアにしても同じことだろう。


中国の台頭によって、権威主義国家の為政者達は、内外からの民主化圧力をやり過ごす事がより容易になったと思う。タイの黄色シャツリーダーたちなども、ある時期から、中国がモデルの職業代表制議会の導入を唱えだした。普通選挙では勝てない事が分かったから、中華式の「新しい民主主義」にレトリックを変えたのだ。中国共産党式の統治がタイの保守勢力のロールモデルとなったのである。


言葉だけなら、そんなものでも民主主義と呼ぶ事はできる。朝鮮民主主義人民共和国が良い(悪い?)例だ。あの国は、民主主義でも、人民の国でもなく、実像を見れば共和制ですらない。(一種の世襲王朝だろう。しかもこの時代に絶対王制!)ベトナムはその点は正直で、ベトナム社会主義共和国が正式名称である。ちなみに黄色シャツの正式なグループ名は「民主主義のための国民連合」だが、これは正直とは言えない北朝鮮流命名法だろう。


「体制」は違っても、権威主義的な政府やその支持者たちの発想は似てくるのだ。共通項は、自由主義、議会制民主主義への嫌悪感、もしくは恐怖感であり、もう「体制」を区別する基準はそこにしかないのである。だから、かつての「反共メディア」の「反共」は死語となり、RFA が社会主義的権威主義国家のファクトを報道するだけで「人権と民主主義の守護者」のように見えてくるのだと思う。


「そんなこと、とうの昔から当たり前のことになっているではないか」と言われればその通りだが、自分には Radio Free Asia のようなメディアを色眼鏡で見る傾向があったので、頭を整理するために書いてみた。もちろん、アメリカ政府の管轄下にあるメディアということのバイアスは考慮するが、個々の情報は、一般メディアが扱わないニュースを取り上げているという意味で有用だと思うのである。


<了>


Radio Free Asia のホームページ


Wikipedia RFAに関して

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