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街角ピックアップ〜2月1日、タイ版統一地方選

  • 執筆者の写真: akiyamabkk
    akiyamabkk
  • 2月1日
  • 読了時間: 5分

更新日:3月29日



今日は、タイの「地方統一選」の日。県行政機構委員長と県行政機構委員が選出される。県行政機構とは、地方自治を代表する民選の行政委員会で、公共事業の予算配分に権限を持つ。一方で、内務省が任命する県知事がおり、こちらは公務員を統率して、県行政機構が決定した方針を実行に移すのが役割のようである。

 

この他にも県議会があるのだから、県行政機構は、行政機関のはずだ。法律でも、同機関は「県最大の(権威を持つ?)行政機関」と定められているが、一方で、公務員を統率して政策を実現するのは国から派遣された県知事なのだから、どう見ても二重行政のように思われる。つまり、県知事は、地方自治に国がグリップを効かせるための歯止めの役割をしているようだ。

 

法律を読んでもよくわからないので、パンティップというタイ最大の掲示板サイトをのぞいてみたが、ちゃんと理解しているタイ人はいないようで、例えば、こんなことを皮肉っぽく書いて、二つの役職の役割分担を尋ねる問いに、お茶を濁していた。

 

これが違い・・・

県行政機構委員長ー金で票を買う

県知事ー金でポジションを買う

 

県行政機構の下部組織にタンボン(村落)行政機構というのがあり、やはり選挙で選ばれ、タンボン(複数の村を集めた行政単位)レベルでの公共事業の予算配分に実際に権限を持っている。また、村にある役所は、県庁の出先機関ではなく、タンボン行政機構(オーボートー)という名前がついていて、そこに勤めている職員はタンボン行政機構が雇用しているようである。隣にある保健所は、保健省から人が派遣されているだろうから、国の出先機関である県庁の管轄ではないか?

 

公金にアクセスできるから、タンボン委員のポジションは、村人たちに人気が高く、選挙で現金が飛び交うことは当たり前、時にエスカレートして本物の実弾が飛び交うこともあるようだ。

 

ちなみに、今回の県レベルの選挙で配られた「実弾」は50バーツ(200円)。「実弾」と呼ぶには、あまりにも貧弱な金額だが、有権者数の多いアンプー(郡。いくつかのタンボンで構成される)単位で選挙が行われるから、薄く広く配らねばならず、このくらいの額になるのだそうだ。選挙違反での告発を恐れてか、運動員は、一言も発せずに、黙々と「ご祝儀」を渡していき、村人も黙って受け取る。正しくアウンの呼吸というやつだ。

 

「ご祝儀」が安いのは、県のラスボスの息のかかった政党がこの区域で他を圧倒しているからでもある。選挙ポスターもその政党の候補者のものしか置いていないから、多くの村人は、投票場に行って初めて他の候補者の顔と名前を知ることになるのだろう。「ほぼ決まり」だから、多額の「チップ」を配る必要もないわけだ。

 

※選挙ポスターはこちらの旧ブログで

「身辺雑記〜村で見かけたポスターを幾つか」


意外だったのは、村落単位で行われる村長選挙や、タンボン行政機構委員の選挙の方が、配られる「ご祝儀」が高くなるということだ。村の有権者はせいぜい500人くらいだから一人頭を多く出せるし、ほぼ結果が定まった県レベルの選挙より、候補者の勢力も伯仲する。だから、「ご祝儀」が300バーツ、400バーツに跳ね上がることもあるのだという。これは、やはり選挙区が広い国政選挙でも同じことで、「チップ」は多くても100バーツくらいなのだそうである。国政選挙だから当然、高騰すると思っていた。


※ちなみに我がアンプー(郡)の人口は134,839人。村の人口は755

人である。総選挙の際の「実弾」の額は、中央のメデイアでルーティーンとして報道される金額とかなり隔たりがあるので、検証する必要があるだろう。


クーデターを支持したタイの旧エリートたちは、タクシン氏の国政選挙での勝利を「金満選挙のおかげ」と決めつけていたが、村落レベルの政治は、それほど単純なものではなさそうだ。今回、一つの政党しか「ご祝儀」を配っていなかったのも、他の政党が「やっても無駄」と切り捨てたからで、可能性があれば「チップ」を配っていたに違いない。そういう場合でも、村人は、「各方面」から「チップ」を受け取った上で、最終的には、自分たちの利益になる政策、政策実現能力のある政党に一票を投じているだろう。「ご祝儀」を受け取ることは、村人同士の「お付き合い」であり、まさか拒絶することもできないし、断る理由もないのである。


ちなみに、タイの投票率が高い理由の一つは、おそらくこれだろと思う。秘密投票に対する信頼感は十分に浸透しているので、投票先は自分で決めるとしても、投票には行っておかないと、「御祝儀」を受け取った全ての党の顔を潰すことになる。狭い社会だから、誰が投票に来なかったかは、すぐわかるのである。


また、投票しないと直近の選挙への被選挙権が剥奪されることも、多少は、影響しているかもしれない。タンボン行政機構委員を公選制とすることで、「誰でも村落行政に関われる」という意識が芽生えてきたようなのである。事実、親戚のその辺のおっちゃんが委員になっている。親戚一同が推した結果であるが、落選すると借金だけが残って大変なことになる。


ということで、アンプー単位で選ばれる県行政機構委員は番号◯で決まったようなものだろう。県行政機構委員長の方は、他のアンプー(郡)の結果にも左右されるから、100%とは言えないが、まず間違いなく当選すると思う。


結果は、明日、追伸で報告します。


余談だが、選挙ポスター(というか大きな立て看板だが)が、選挙当日には、綺麗に片付けられているのに驚いた。バンコクでは、候補者のポスターが、何ヶ月もそのままになっていることが多いのだ。この辺りは、地方の方がよっぽどしっかりしている。


<了>


※追伸 予想通り、No.◯の候補者が委員も委員長も当選。種明かしをすると、この県行政機構委員長候補は現職であり、ブリラムユナイテッドのオーナーの縁者だったのである。

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