Look Back (2024) 映画感想文 ※タネアカシあり。
配信サービスにあったので見てしまった。泣けた。何よりまず絵が素晴らしい。自分はアニメの絵には抵抗感がある方なのだが、この絵は好きだ。(例えば、「君の名は」の絵は、自分はダメなのだ。 ストーリーに入れない)タイ人レビュアーが、絵の完成度に難点があったと文句をつけていたが、どこを見ていたのか?ディズニーのアニメーションにかぶれているだけだろう。自分が今まで見た中で、最高のアニメーションの絵だったと思う。
藤野が京本に褒められて嬉しくなって、漫画への情熱を取り戻し、雨の中を飛び跳ねて帰るのは「雨に唄えば」である。二人で街に遊びに行くシークエンスも素晴らしいし、京本が勇気を出して藤野との決別を言い出すシーンは、還暦の俺の胸が痛んだ、いや、マジで。自分も引きこもり予備軍だったのだ。印象に残った絵はいくつもあるので、ここに詳しく書くために見直したいところだが、今はもう一度見る気になれない。これは予想通り後を引くなあ。
映画の地方都市の風景に、自分が生まれ育った街を思い出す人は多いのではないか?自分は四国の山猿だが、学校への行き帰りに歩いた田んぼの風景を思い出した。もっとも、自分が子供の頃の瀬戸内の地方都市は、環境行政が整備される前で、夏は毎日のように光化学スモッグ注意報が出て、田んぼの脇を通ると、草いきれにマジってムッと農薬の匂いがして頭がクラクラした。このアニメの農村風景をみると、日本の田舎は随分、良くなったのではないかと思う。何でも「昔が良かった」とは限らないのである。
パラレルワールドについて言えば、やはり、不慮の事後や事件で最愛の人を失った人が、必ず一度は夢想するであろう「Ifの幻想」を描いていた。タランティーノなら、徹底的にボコボコにして頭の皮を剥ぐところだが、このアニメーションでは、漫画好きの少女らしい幻想として軽やかに描かれている。Wiki が京アニ事件の影響に触れていない理由わかった。おそらく、犯人の描写がリアルすぎて、見るものに、ある種の偏見を抱かせる可能性を問題視する人がいたからだろう。
しかし、ラストシーンを見ても、このアニメーションが、京アニ事件で亡くなった同業者への追悼と、生き残った者へのエールであることは明らかである。
そしてこれは、女の子同士のプラトニックラブストーリーでもあるのですね。冒頭の4コマ漫画でそのことが告知されているではないか。
合掌 ではでは