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スミス氏は都へ行き、ウクライナの少女はベルリンへ向かう、ADOのコンサートを見るために・・

  • 執筆者の写真: akiyamabkk
    akiyamabkk
  • 3月1日
  • 読了時間: 3分

YouTuber カトリンカさんのサイトから。


コメント欄は、ADOの新曲にリアクションしたYouTubeサイトから。コメントしている15才の女の子は、今夏に催されるADOのコンサートを見るため、キエフから24時間かけて、長距離バスでベルリンまで行くのだそうだ。(1400キロ!)彼女はこう書いている。


I'm so excited to be able to go to her concert! I'm only 15, and I'm going to travel 1400 km alone, more than 24 hours only one way, from Kiev to Berlin just for Ado. I have to spend nothing from my scholarship (which is only about 30 dollars a month) for a year to be able to pay for the bus there and back, but I'm so happy....


月30ドルの奨学金を何にも使わないで一年間かかって往復のバス代を貯めたのだけど、でも、本当に幸せ・・・


ADOの大ファンとして知られるボーカルコーチのカトリンカさんは、心配のあまり、悲鳴をあげるような調子で、こう答えている。


oh damn baby just stay safe okay? That is a whole JOURNEY you are going on and it can be dangerous. Please please be double cautious when traveling! <3


ほんとうに安全には気を付けて、わかった?長い旅だし、そこには危険がつきまとうの。ほんとうに、ほんとうに気をつけてね。


自分も同じ気持ちだ。この後の返信で「ワルシャワで年上の友人と合流するから大丈夫」などと書いているが、その人は本当に信用できる大人なのだろうか?・・・などと、事情をよく知らないで心配している。



このコメントがエルフのリアクション投稿に寄せられたことは、ちょっと象徴的だ。自分には、この歌は、「怪獣のような世界の隅っこ」にいる彼ら不遇の若い人の、抑圧された可能性への応援歌・・・あるいは鎮魂歌のように聞こえるのだ。


「同胞が祖国の独立を守るために戦っているときに、他国までアニメ歌手のコンサートを聴きに行くのか!」・・・などとは思わないでほしい。人間、どういう状況でも歌は歌うのだ。ウクライナ版「ザ・ヴォイス」はロシアの侵略後ほどなく再開したが、それは、ウクライナの強さと見るべきだろう。


小説「黒い雨」の中で、主人公が原爆の惨禍を目の当たりにしながら、「正義の戦争より不正義の平和の方がいい」とつぶやくシーンがある。ロシアの侵略から3年が経過して、ウクライナの人がそう考えるようになったとしても、他国の人間がとやかく言える話しではないだろう。しかし、「ウクライナが侵略を始めた」などというたわけた前提で停戦が押しつけられるならば、侵略に抵抗して死んでいった人が浮かばれないではないか。


トランプの、あの血迷いきった暴言と前後して、このウクライナの女の子のコメントを見て、複雑な気分になった。結局のところ、自分は、彼女がADOのコンサートに無事辿り着けるよう、アジアの隅っこから、お祈りするくらいのことしかできないわけだから。


<了>


ADOの「エルフ」

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